ドローンを飛行させる上では、「航空法」という法律で定められたルールを把握しておく必要があります。

このルールに違反した場合には、罰則(罰金や懲役刑)を受けてしまうことがあります。

ルールはドローンを飛行させる時はもちろん、「飛行前」と「飛行後」にも定められています。

知らず知らずのうちに違反していたということにならないように航空法のルール・義務をしっかり理解しましょう。

今回は、ドローンを飛行させる上で航空法に違反した場合にどんな罰則があるのか、罰則の重い順に解説します。

 

2年以下の懲役または100万円以下の罰金

事故発生時に救護などの必要な措置をしなかった

ドローンを飛行させて

  • 人を死傷させた
  • 建物を損壊させた
  • 航空機と衝突した

という場合は、飛行を中止し、必要な措置をとらなければなりません。

必要な措置とは、当たり前と言えば当たり前ですが、負傷者の救護(救急車を呼ぶなど)や警察へ通報するなどのことです。

これをしないということは、自動車で言えば当て逃げやひき逃げと同じです。

ドローンの罰則で一番重いものとなっています。

 

1年以下の懲役または50万円以下の罰金

機体の登録を受けずにドローンを飛行させた

2022年6月以降、ドローン(100g以上)の登録が義務化されました。

自動車登録と同じようにドローンを飛行させるには、機体登録が必ず必要になります。

機体登録をすると車のナンバーのように登録記号(ID)が発行されます。

 

1年以下の懲役または30万円以下の罰金

アルコールや薬物を摂取した状態でドローンを飛行させた

飲酒時(薬物)にドローンを飛行させることは禁止されています。

車の飲酒運転のように明確な基準値は定められていませんが、少量でも正常な飛行に影響を与える可能性があります。

アルコールは完全に抜け切った状態で飛行させましょう。

また、薬物とは医薬品を含んだものです。麻薬や覚せい剤等に限りません。

 

100万円以下の罰金

国土交通大臣による立入検査、報告徴収を拒否した

国土交通大臣(国土交通省)は必要があるときは、ドローンの所有者や使用者の事務所等に立入検査を実施することができます。

その際は、ドローンや書類を検査したり、関係者に質問がされますが、これを拒否・妨害したり、嘘の申し出をした場合は罰則の対象となります。

また、国土交通大臣(国土交通省)は、ドローンの飛行や設計等に関して報告を求めることができますが、これを拒否したり、嘘の報告をした場合でも罰則の対象となります。

 

50万円以下の罰金

登録記号の表示、リモート ID の搭載をせずに飛行させた

機体登録後、登録記号が発行されるので、自動車のナンバープレートと同じように機体に表示させなければなりません。

一般的には、確認しやすい場所にテプラ等のシールで表示させます。

また、この登録記号はドローンに内臓された(または外付け)リモートIDに書き込まなければいけません。

※2022年6月19日までに機体登録した場合は、リモートIDを搭載する義務はありません。

「リモートID」とは、登録記号を含む識別情報を発信する機器のことをいいます。

ドローンの場合は、自動車のように肉眼で番号を確認できないので、通信により識別情報を伝える必要があります。

 

違反 → 50万円以下の罰金

 

飛行前の確認・点検をしないで飛行させた

飛行機のパイロットが飛行前にコックピットで入念に点検をしますが、ドローンも同じように点検・確認が必要です。

確認・点検する内容は、

  • 飛ばすドローンの状態・状況
  • 飛行空域とびその周囲の状況
  • 気象情報
  • 燃料の搭載量またはバッテリーの残量
  • リモートIDの作動状況

です。

違反 → 50万円以下の罰金

 

飛行マニュアルを守らずに飛行させた

飛行マニュアルは、ドローンの安全と適切な運用のために必要となるマニュアルのことです。

飛行マニュアルは、飛行許可申請の際に必要となる添付書類になっています。

飛行マニュアルを自分で作成される方もいますが、国土交通省の航空局標準マニュアルをそのまま申請に使う方も少なくありません。

国土交通省の航空局標準マニュアルを利用する場合、その内容まで理解していない方が少なくありません。

内容を知らないと、気づかぬうちに違反をしてしまうこともあるので、内容は必ず理解しておきましょう。

違反 → 50万円以下の罰金

 

規制対象となる飛行の空域・方法に違反して飛行させた

規制対象となる飛行の空域(空港の周辺、人口集中地区、150m以上の上空など)でドローンを飛行させるには、国土交通大臣の許可が必要です。

また、規制対象となる方法(夜間での飛行、目視外での飛行、催し場所上空での飛行など)でドローンを飛行させるには、地方航空局長の承認が必要です。

違反 → 50万円以下の罰金

 

迷惑飛行をした

これは言うまでもないのですが、ドローンを急降下や急旋回させて他人にぶつけてしまうような飛行、騒音を出して迷惑をかけるような飛行は禁止されています。

違反 → 50万円以下の罰金

 

衝突防止をしなかった

航空機や他のドローンと衝突する危険性があるときは、衝突の予防が必要です。

具体的には、地上に降下させたり、別の方角に飛行させるなどをします。

空では無人航空機よりも有人航空機が優先です。

横断歩道で歩行者を優先させるように人が乗っている飛行機やヘリコプターがいれば、必ず空路を譲ってください。

また、他のドローンが飛行していれば、衝突する危険性がなくても、常に安全な間隔を確保しなければなりません。

違反 → 50万円以下の罰金

第三者が立ち入った場合の措置

ドローンで特定飛行を行う場合、ドローンの下に第三者の立ち入りまたはその可能性があれば必要な措置を取らなければなりません。

必要な措置とは以下のようなことをいいます。

  • 飛行を停止させる
  • 飛行経路の変更
  • 安全な場所へ着陸させる

また前提として、ドローンは、第三者の上空では飛行させることができません。

許可承認を受けた場合でも第三者の上空で飛行させることはできません。

違反 → 50万円以下の罰金

 

国土交通大臣からの是正命令違反

ドローンやその装備品が、安全性に欠けていれば、是正命令を受けてしまうことがあります。

安全性に欠けるものとは、

  • 表面に突起物がある
  • 遠隔操作や自動操縦が非常に困難

など安全が著しく損なわれるおそれがあるものとして指定されたものです。

是正命令に従わなければ違反となります。

違反 → 50万円以下の罰金

 

機体認証を受けたドローンの条件義務違反

機体認証を受けたドローンで特定飛行をするには、指定された条件に従う必要があります。

条件に従わずに飛行させた場合は違反になります。

ただ、

  • 係留飛行をする
  • 特定飛行の許可・承認を受けている

という場合は条件に従う必要はありません。

※機体認証は義務ではありません。

機体認証は、カテゴリーⅡ飛行、カテゴリーⅢ飛行(第三者の上空で特定飛行を行う)など特別な飛行で必要となります。

違反 → 50万円以下の罰金

 

機体認証を受けたドローンの整備命令違反

機体認証を受けたドローンが、

  • 安全基準に適合しなくなった
  • 安全基準に適合しなくなる可能性がある

という場合は必要な整備・措置をとることが命じられます。

この是正命令に従わなければ違反となります。

違反 → 50万円以下の罰金

 

技能証明につけられた条件義務違反

技能証明を取得してドローンを飛行させる場合、状況によっては条件がつけられることがあります。

また、飛行の方法が限定されることもあります。

これらに従わなければ違反となります。

ただ、

  • 係留飛行をする
  • 特定飛行の許可・承認を受けている

という場合は条件に従う必要はありません。

技能証明は、カテゴリーⅡ飛行、カテゴリーⅢ飛行(第三者の上空で特定飛行を行う)など特別な飛行を行う場合に機体認証とセットで必要となります。

違反 → 50万円以下の罰金

 

30万円以下の罰金

飛行計画の通報義務違反

特定飛行を行う際は、飛行前に飛行計画の通報が必要です。

飛行計画の通報DIPS2.0(ドローン情報基盤システム2.0)により行います。

「飛行計画」とは、ドローンを飛ばす日時や経路、速度、高度、目的などその日に行う飛行内容のことです。

違反 → 30万円以下の罰金

 

事故発生時の報告義務違反

ドローンを飛行させて事故を起こした場合、

例えば、

  • 人を怪我させた
  • 車にぶつけてへこませた
  • ヘリコプターと衝突した

というような場合はDIPS2.0(ドローン情報基盤システム2.0)により事故について報告を行うことが必要です。

報告をしなかったり、嘘の報告をすると罰金刑となります。

違反 → 30万円以下の罰金

 

紛らわしい表示(形式認証)

形式認証を受けていなければ、その表示をさせてはいけません。

また、わざとでなくても、型式認証と間違えてしまうような、紛らわしい表示もしてはいけません。

違反 → 30万円以下の罰金

 

10万円以下の罰金

技能証明書の携帯義務違反

技能証明を受けた者が、特定飛行を行う場合は、技能証明書を携帯しなければなりません。

違反 → 10万円以下の罰金

 

飛行日誌を記載しなかった、嘘の記載をした

ドローンで特定飛行を行う者は、飛行日誌を記載しなければなりません。

飛行日誌とは、

  • 飛行記録
  • 日常点検記録
  • 点検整備記録

の3種類の記録で構成されています。

飛行や点検の記録はもちろん、整備や改造をした場合なども記録が必要です。

※詳しい記載内容は無人航空機の飛行日誌の取扱要領を参照してください。

違反 → 10万円以下の罰金

 

飛行日誌を備えないで特定飛行を行った

ドローンで特定飛行を行うときは、飛行日誌を常時携行しなければなりません。

なお、飛行日誌は紙ではなく、デジタル形式でも認められています。

違反 → 10万円以下の罰金

 

30万円以下の過料

機体の変更届をしなかった

ドローンの登録事項に変更があったときは、 15 日以内に届出を行う必要があります。

この届出は、下記の場合に必要です。

  • 所有者情報に変更があった
  • 使用者情報に変更があった
  • 使用者が変わった
  • 改造を行った
  • リモートIDの有無

違反 → 30万円以下の過料

虚偽の内容で届出をした場合も同様、罰則の対象となります。

 

登録抹消の申請をしなかった

ドローンを処分・紛失をした場合には、15 日以内に登録抹消の申請が必要です。

例えば、以下のようなケースです。

  • 故障などで処分する
  • 飛行中に見失ってしまって2ヶ月が過ぎた
  • 改造した結果、もはやドローンではなくなった

違反 → 30万円以下の過料

 

まとめ

この他にも小型無人機等飛行禁止法、民法、電波法など様々な法律の規制を受けます。

また、国が定める法律以外にも都道府県や市区町村にも条例が定められていることもあります。

ドローンを飛行させる場合は様々な法律の理解が必須ですが、内容をしっかり理解し、違反のないようにしましょう。

 

航空法に違反した場合、次のような罰則が課されます。

罰則規定 違反内容
2年以下の懲役または100万円以下の罰金 事故発生時に救護などの必要な措置をしなかった
1年以下の懲役または50万円以下の罰金 機体の登録を受けずにドローンを飛行させた
1年以下の懲役または30万円以下の罰金 アルコールや薬物を摂取した状態でドローンを飛行させた
100万円以下の罰金 国土交通大臣による立入検査、報告徴収を拒否した
 

 

 

 

 

 

 

 

50万円以下の罰金

登録記号の表示、リモート ID の搭載をせずに飛行させた

飛行前の確認・点検をしないで飛行させた

飛行マニュアルを守らずに飛行させた

規制対象となる飛行の空域・方法に違反して飛行させた

迷惑飛行をした

衝突防止をしなかった

第三者が立ち入った場合の措置

国土交通大臣からの是正命令違反

機体認証を受けたドローンの条件義務違反

機体認証を受けたドローンの整備命令違反

技能証明につけられた条件義務違反

 

 

30万円以下の罰金

飛行計画の通報義務違反

事故発生時の報告義務違反

紛らわしい表示(形式認証)

 

 

10万円以下の罰金

技能証明書の携帯義務違反

飛行日誌を記載しなかった、嘘の記載をした

飛行日誌を備えないで特定飛行を行った

 

30万円以下の過料

機体の変更届をしなかった

登録抹消の申請をしなかった